PGP署名の検証

はじめに

Google Play からAndroid 端末にインストールしていたTermux の更新が止まり、パッケージ管理のリポジトリへの接続も失敗するようになっていたので、公式サイトで案内されているF-Droid を使ってインストールすることにしました。

F-Droid はGoogle Play を使わずに、APKファイルをF-Droid のサイトからダウンロードしてインストールする必要があったので、ダウンロードしたAPKファイルをPGP 署名で検証しようと思ったけれど、検証の仕方が全くわからなかったので調べながらやった記録です。(GnuPG を使ってみた記録です

GnuPG

環境について

  • MacBook Pro 2022(macOS Monterey)

手順

1. GnuPG のインストール

Homebrew を使ってインストールしました。

  • GnuPG の配布されているバージョンは、2系は最新バージョンLTS の2つあったのでLTS をインストールした
  • GnuPG は2.x のxが偶数をLTS としているようです
  • [email protected] – Homebrew
brew install [email protected]
Homebrew gnupg@2.2 インストール

インストール時のプロンプトに上記のコメントがありました。
インストールしたのがkeg-only だからパスが通っていないとのことなので、~/.zshrc に下記を追記します。

export PATH="/opt/homebrew/opt/[email protected]/bin:$PATH"

追記した後にsource ~/.zshrc を実行して設定を反映します。

2. ファイルのダウンロード

F-Droid の公式サイトから署名対象のAPKファイル署名ファイルをダウンロードします。

F-Droid

QRコードは”F-DROIDをダウンロード” のリンク先と同じF-Droid.apk のURL なので、スマホでダウンロードする際はこのQRコードを使う感じになっています。

  • 署名対象のAPKファイル
    • F-Droid のAPKファイル。F-Droid.apk
  • 署名ファイル
    • F-Droid の署名ファイル。F-Droid.apk.asc

3. 署名の検証に使う公開鍵のダウンロード

署名の検証に使うF-Droid公開鍵を入手する方法を調べたところ、F-Droid のAPKファイルと同じ場所に置いたら公開鍵も一緒に置き換えられるだろうからそんな検証意味あるか?みたいなことが書かれていました。

PGPの信頼の輪の仕組みにより配布されている公開鍵を入手するのが正解のようです。(たぶん)

下記のコマンドを実行して公開鍵サーバの公開鍵を検索します。

gpg --search-keys f-droid
公開鍵サーバの公開鍵の検索

上記のように”f-droid” で2件検出されました。
下記の公式サイトに掲載されている公開鍵の情報のユーザID(GPG signing key)と一致している(1) を選択して公開鍵をダウンロードします。ダウンロードと同時にインポートされました。

F-Droid 署名鍵

インポートされた公開鍵を下記のコマンドで確認します。

gpg --list-keys
インポートした公開鍵(不明)

~/.gnupg/pubring.kbx に先ほど選択した公開鍵が登録されていましたが、uid の欄で”不明” という扱いになっています。

公開鍵が配布者により署名されていないので、この状態で署名を検証すると下記のように検証に失敗します。

gpg --verify F-Droid.apk.asc
署名の検証(不明)

4. ダウンロードした公開鍵に署名する

ダウンロードした公開鍵が正規のものであるかは、公式サイトに掲載されている公開鍵の情報と公開鍵サーバから入手した公開鍵が同じであることが信頼できるものとして、自身の署名用の鍵を使って公開鍵に署名します。

とはいえ、まだ自身の署名用の鍵を作っていなかったので、まずは下記のコマンドで公開鍵暗号のキーペアを作成します。

  • gpg の鍵を生成するコマンドは3種類ありました。とりあえず、鍵の種類などを指定できるgpg –full-gen-key で作ることにしました。
    • gpg –full-gen-key
      • 鍵の種類、鍵長、有効期限:指定して作成する
      • ユーザIDの構成情報(名前、メールアドレス):指定して作成する
    • gpg –gen-key
      • 鍵の種類、鍵長、有効期限:デフォルトで作成される
      • ユーザIDの構成情報(名前、メールアドレス):指定して作成する
    • gpg –quick-gen-key
      • プロンプトで何も入力しないで作成する
gpg --full-gen-key

続けて、ダウンロードした公開鍵に署名します。

gpg --lsign-key F-Droid

署名後の公開鍵をgpg –list-keys で確認すると、uid の欄が”充分” になっていました。

インポートした公開鍵(充分)

5. 署名の検証

準備が整ったので署名を検証します。

gpg --verify F-Droid.apk.asc
署名の検証(充分)

今回は署名が”充分” となり、メッセージの内容から問題はなかったようです。

あとがき

Android 端末にインストールしようとしているソフトウェアが正規のものであることを今回はパソコンで検証しましたが、これがAndroid 端末上でできたらよいのですが、標準でその機能はなさそうです。
今回インストールするF-Droid を使ってインストールする予定のTermux にGnuPG をインストールすればできそうな気がします。

とりあえず、今回はここまでです。

参考

GitLabのメール設定(SendGrid)

前回「UbuntuにGitLabをインストール」の続きです。

GitLab からユーザにメールの通知ができるようにします。
メールの送信はSendGrid というメール配信サービスを利用することにしました。

はじめに

GitLab のメールを送信する方法は下記のどちらかになります。

  • Sendmail やPostfix のようなメールサーバ(MTA)をインストールして送信する
  • SMTP サーバ経由で送信する

今回、前者の方でやろうと進めていましたが手こずったので、諦めて後者の「SMTP サーバ経由で送信する」で対応することにしました。

SMTP サーバの選定

軽く使う程度なので、無料で使えることと設定がしやすさよさそうだったという点で、Twilio社のSendGrid にすることにしました。

SendGrid ロゴ

Free プランは100通/1日を上限として無料で使うことができます。
最初の3ヶ月だけ無料というような期間限定もないです。

SendGrid 料金プラン

環境について

ローカル環境

GitLab はLAN環境でのみアクセス可能(インターネット上に公開しない)

  • Raspberry Pi 4 Model B / 8GB
  • Ubuntu Server 20.04.4 LTS (64bit)
  • GitLab Enterprise Edition 14.9.3-ee (Omnibus)

ウェブサービス

  • SendGrid

SendGrid の設定

1. SendGrid のアカウントを作成

SendGrid のウェブサイトにアクセスして、Free プランでアカウントを作成します。
一般的な手順で作成できたので解説は省略します。

2. Sender Identity の作成

アカウントを作成してログインすると、下記の緑色のバー「最初のメールを送る前にsender identity の作成が必要」があるので、[Create a sender identity] をクリックします。

SendGrid > Sender Identityの作成

※ サイドバーの[Settings] > [Sender Authentication] からもSender Identity を作成することができます。

SendGrid > Sender Identityの作成 > 配信者の認証方法を選択

Sender Identity は下記の2つの方法で作成できます。(両方も可能)

  • Domain Authentication
    • 送信ドメイン認証(SPFとDKIM)。独自ドメインのDNS の設定が必要
  • Single Sender Verification
    • SendGrid を使って送信するメールの差出人の情報を登録する。メールを受信できるメールアドレスが必要

今回は、DNS の設定が不要な”Single Sender Verification” にするので、Single Sender Verification の右の[Get Started] をクリックします。

SendGrid > Sender Identityの作成 > Create a Sender

送信したメールの受信者側に表示される情報(メール差出人の名前・メールアドレス)や迷惑メールの防止に関する法律を遵守する上で必要な情報(会社の住所など)を登録します。

日本の場合は特定電子メール法に、特定電子メールの送信者に課される表示義務(特定電子メールである旨、送信者の情報:氏名・名称・住所、送信者の送信に使ったメールアドレス、送信者の受信用のメールアドレス)というのがあるので、この辺のことと思われます。

今回の使用目的はGitLab ユーザーへのメール通知なので、ここの登録を難しく考えるより、アカウントの乗っ取りを気をつける方を重視しようと思います。(→後述「4. アカウントの保護(2要素認証の設定)」)

入力にあたっては、下記のサイトが参考になりました。

入力して[Create] をクリックすると、”From Email Address” に入力したメールアドレス宛にメールが送られ、下記のページが表示されます。

SendGrid > Sender Identityの作成完了(仮)

届いたメールがこちらです。

SendGrid > Sender Identityの作成 > メール受信で認証

[Verify Single Sender] をクリックします。

SendGrid > Sender Identityの作成 > メール受信で認証完了

SendGrid を使って送信するメールの差出人のメールアドレスが認証されました。
[Return to Single Sender Verification] をクリックすると元のページに戻り、下記のように認証された差出人の情報が表示されています。

SendGrid > Sender Identityの作成完了

3. API Key の作成

サイドバーの[Settings] >[API Keys] をクリックします。

SendGrid > API Keyの作成

[Create API Key] をクリックします。

SendGrid > API Keyの作成 > 権限の選択

API Key Name” に任意の名称を入力して、下記のいずれかを選択します。

  • Full Access
  • Restricted Access
  • Billing Access

今回の使用目的はGitLab ユーザーへのメール通知なので、機能制限ができる”Restricted Access” を選択します。

SendGrid > API Keyの作成 > Restricted Access

Access Details の”Mail Send” の右にある線をクリックして”Full Access” まで青い線が引かれた状態にして[Create & View] をクリックします。

SendGrid > API Keyの作成完了(API Key表示)

作成されたAPI Key が表示されるのでコピーしてどこか安全な場所に保存しておきます。

  • 表示されているAPI Key は再度表示できない
  • 安全な場所に保存とのことなので、パスワードマネージャーに作成したSendGrid のアカウントの一項目の情報として登録しておきました

[Done] をクリックすると元のページに戻り、下記のように作成したAPI Key が表示されます。

SendGrid > API Keyの作成完了

左のAPI Key ID はAPI Key の一部で、中央のAPI KEY はマスクされた状態でクリックなどしても表示されないようになっています。

4. アカウントの保護(2要素認証の設定)

本題からそれますが、前述「2. Sender Identity の作成」の手順の途中で記載したアカウントの乗っ取りを気をつける方を重視の対応です。

サイドバーの[Settings] >[Two-Factor Authentication] をクリックして、Authy またはSMS を選択して2要素認証の設定をします。
※ 手順の解説は省略します

GitLab の設定

1. /etc/gitlab/gitlab.rb

GitLab の公式ドキュメントを参考に設定します。

gitlab_rails['smtp_enable'] = true
gitlab_rails['smtp_address'] = "smtp.sendgrid.net"
gitlab_rails['smtp_port'] = 587
gitlab_rails['smtp_user_name'] = "apikey"
gitlab_rails['smtp_password'] = "the_api_key_you_created"
gitlab_rails['smtp_domain'] = "smtp.sendgrid.net"
gitlab_rails['smtp_authentication'] = "plain"
gitlab_rails['smtp_enable_starttls_auto'] = true
gitlab_rails['smtp_tls'] = false
# If use Single Sender Verification You must configure from. If not fail
# 550 The from address does not match a verified Sender Identity. Mail cannot be sent until this error is resolved.
# Visit https://sendgrid.com/docs/for-developers/sending-email/sender-identity/ to see the Sender Identity requirements
gitlab_rails['gitlab_email_from'] = 'email@sender_owner_api'
gitlab_rails['gitlab_email_reply_to'] = 'email@sender_owner_reply_api'

黄色いマーカーの3ヶ所に任意の値を指定します。

  • smtp_password
    • 作成したAPI Key
  • gitlab_email_from
    • 認証したSender Identity のFrom Email Address
  • gitlab_email_reply_to
    • 認証したSender Identity のReply To

設定ファイルを再読み込みして設定を反映します。

sudo gitlab-ctl reconfigure

2. テストメールの送信

下記のコマンドを実行してテストメールを送信します。

sudo gitlab-rails console

Notify.test_email('[email protected]', 'Message Subject', 'Message Body').deliver_now
→ テストメールが送信される

※ 黄色いマーカーの3ヶ所に送信先メールアドレスメールのタイトルメールの本文を指定します。

3. ユーザの作成

ブラウザでGitLab にroot ユーザなどAdministrator 権限のユーザでログインしてユーザを作成して、作成時に登録したメールアドレスにGitLab からメールが届くか確認します。
届いたメールのリンクをクリックして初期パスワードを設定することで作成したユーザが使えるようになります。
※ 手順の解説は省略します

あとがき

これで普通にGitLab を使えるようになったのではないでしょうか。管理者ユーザと一般ユーザを作って管理するという感じで。

インストール後の推奨される次のステップ、他にも何かあるので必要そうであれば対応してみようと思います。

参考

YubiKeyで静的パスワードを扱う

はじめに

静的パスワードを管理するYubiKey 5Secure Static Password という機能を使ってみたので、使った感想を記録しておきます。

Secure Static Password 機能について

Secure Static Password は、パスワードをYubiKey に登録して、そのパスワードを入力したい位置にカーソルを置いてYubiKey をタッチすると、登録したパスワードが入力されるという機能です。

パスワードは1件しか登録できないので、パスワードマネージャーのように複数のサービスのパスワードを管理できる訳ではないです。

環境

今回、普段使っているパスワードマネージャー1Password のログイン時に入力しているマスターパスワードをYubiKey に登録して使ってみようと思います。

  • OS:macOS Monterey
  • YubiKey Manager (ver.1.2.4)
  • YubiKey 5 NFC
  • 1Password (ver.8.7.0)

使い方

1. YubiKeyに静的パスワードを登録

YubiKey Manager を起動してYubiKey をパソコンに挿入し、メニューの[Applications] > [OTP] をクリックします。

YubiKey Manager >OTP

YubiKey 5 のOTP にはスロットが2つあり、タッチする時間で使い分けができるようになっています。

  • Slot 1:Short Touch(1〜2.5秒)
  • Slot 2:Long Touch(3〜5秒)

今回は空のSlot2 を使うのでLong Touch (Slot2) の[Configure] をクリックします。

YubiKey Manager >OTP > Long Touch(Slot2)

[Static password] を選択して[Next] をクリックします。

YubiKey Manager >OTP > Long Touch(Slot2) >Static Password

任意の文字列を手入力するか、[Generate] をクリックしてランダムな文字列を生成して登録するパスワードを入力し、[Finish] をクリックします。

  • 入力できる文字種は、ModHex 形式USキーボードで使われる文字のどちらかを選択することができます。
  • デフォルトはModHex形式 で、USキーボードで使われる文字に切り替える場合は、”Allow any character” のチェックをONにします。
  • ModHex形式は、全ての言語のキーボードで共通の文字のみ( “c b d e f g h i j k l n r t u v” )で構成され、大文字と小文字の32文字が使えます。
YubiKey Manager >OTP(登録後)

元の画面に戻ると、Long Touch (Slot2) が”This slot is configured” に変わっていました。

  • 登録後に[Configure] をクリックした先の画面で登録したパスワードを確認することはできなかった
  • パスワードは1つしか登録できないので、再度[Configure] から同じ操作で登録すると上書きされる

2. YubiKeyに登録した静的パスワードを使う

1Password のアプリケーションを起動してYubiKey をパソコンに挿入します。

1Password

パスワードの入力欄にカーソルがある状態で、YubiKey を長くタッチすると、登録したパスワードがマスクされた状態で入力され、リーターンキーを押さずにそのままログインすることができました。

間違えて短いタッチをするとSlot1 に設定されているYubico OTP が入力されるので、タッチする長さには気を付ける必要がありそうです。

推奨の使い方

Yubico社が推奨する使い方について

推奨の使い方

Secure Static Password の機能はパスワードの一部にのみ使うことを推奨すると書かれています。
パスワードの前方部は記憶できる文字列後方部はYubiKeyに登録する第三者の推測困難な文字列とするという感じです。

使用例は、以下の通りです。

  1. “Sunny33″を記憶して、”rcltrcihbkkiulnveuenervidliliifv”をYubiKeyに登録し、対象のサービスのパスワードは”Sunny33rcltrcihbkkiulnveuenervidliliifv” で登録する
  2. 対象のサービスにログインする際に、”Sunny33″を手入力し、続けてYubiKeyをタッチして”rcltrcihbkkiulnveuenervidliliifv” を入力する

万が一、YubiKey が盗まれてもパスワードの一部しか漏洩しないので、不正ログインを防ぐことはできそうですが、公開されている使い方なので、記憶できる部分が推測が容易だと簡単に突破されてしまいそうです。

あとがき

  • YubiKey のタッチして文字を入力する仕組み
    • YubiKey はパソコンにUSB 接続するとキーボードとして認識され、タッチするとキー入力として信号がパソコンに送られる
  • ModHex形式 のパスワードについて
    • [Generate] で32桁を生成できるので、ModHex形式で生成した32桁を使うのでもよさそう(32の32乗パターン)
  • USキーボードのパスワードについて
    • 日本語のJISキーボードのパソコンで使うと、USキーボードと配置が違う記号が登録と異なる記号で入力されるかと思ったけれど、登録と同じ状態で入力された
    • 記憶が困難な文字列を登録するのであればUSキーボードで生成するのでもよさそうだけれど、サービス側が許可しない記号が含まれていないようにする必要があるのが若干面倒
  • YubiKey の扱いに注意が必要
    • キーボードで文字入力中にYubiKey に手が触れると、登録されている文字列がプレーンテキスト状態で入力される
    • 無意識にYubiKey に手が触れて登録されている文字列が入力され、入力されたことに気付かないでファイル等を保存するみたいなことも起こりうる
    • デフォルトでShort Touch(Slot1) に設定されているYubiKey OTP は、タッチしてYubiKey から出力される文字列はYubiKey のID(12文字) とAES-128の暗号文(32文字) を結合した44桁の文字列なので漏洩しても大して問題ない
    • Secure Static Password はタッチしただけで生パスワードが漏洩する。推奨の使い方に従ったとしても、生パスワードの一部が漏洩することになる
  • スマホでも使えるか?
    • スマホにUSB接続してキーボードとして認識されれば、パソコンと同じように使える
    • 手持ちのAndroid 端末(Pixel)では使えた
  • 1Password のマスターパスワードで使うことについて
    • Touch ID が使えるMac であれば、Touch ID で1Password にログインできるので、普段はマスターパスワードを入力する機会がない
    • 1Password のサポートページにマスターパスワードは一意でランダムで記憶できるものにしましょうと書かれているが、凡人には困難
    • 第三者に突破されずらいパスワードを扱いやすくすることができるだけでもSecure Static Passwordは使う価値があるのでは?

参考

MacにYubiKey Managerをインストール

YubiKey の設定をするパソコン向けのアプリケーションYubiKey Manager のインストール手順を解説します。
使い方はよく分かっていないので、今回はインストールの解説だけです。

YubiKey Manager アイコン

YubiKey Manager について

YubiKey Manager はYubico社が開発しているもので、ウィンドウ操作で使うGUI ツールと、コマンドライン操作で使うCLI ツール の2種類のツールが提供されています。

Mac へのインストール方法を調べてみると、下記のような感じでした。

Homebrew 以外Homebrew
GUIツールpkgファイルをダウンロードなし
CLIツールpip コマンドを実行あり

GUI ツールにはCLI ツールも含まれているので、今回はGUI ツールをインストールすることにしました。
なお、CLI ツールは単体でのインストールができますが、GUI ツールは単体でのインストールはできなそうでした。

あと、アプリケーションはMac 向け以外に、Linux、Windows 向けも用意されていました。

環境

今回はM1 ProチップのMacBook Pro にインストールしました。
OS はmacOS Monterey(12.2.1)です。
※ インストール後に確認したら、Intel CPU 向けのアプリケーションでした(Rosetta のインストールが必要)

インストール(GUI ツール)

1. パッケージファイルのダウンロード

YubiKey Manager のダウンロードページにある青字の”macOS Download” をクリックして最新版のpkg ファイルをダウンロードします。

YubiKey Manager ダウンロード


5/9時点では 1.2.4 (2021.10.26) 「yubikey-manager-qt-1.2.4-mac.pkg」がダウンロードされました。

古いバージョンをダウンロードできるページもあります(↓)

2. インストール

ダウンロードしたpkgファイルをダブルクリックするとインストーラが起動するので、指示に従ってインストールします。
(一般的な手順でインストールできたので、詳細は省略します)

インストールが完了すると、アプリケーションにYubiKey Manager のアイコンが表示されているはずです。

YubiKey Manager アイコン

3. キー操作の受信設定

システム環境設定を開いてYubiKey Manager によるキーボードの入力監視を許可します。

  1. [セキュリティとプライバシー] をクリック
  2. [プライバシー]タブ > [入力監視] を選択し、[YubiKey Manager.app] のチェックをON

4. GUI ツールの初回起動

YubiKey Manager を起動します。

YubiKey Manager 起動後
YubiKey Manager

もし、前述「3. キー操作の受信設定」をスキップしていると下記のウィンドウが開くので、[“システム環境設定”を開く] をクリックしてシステム環境設定を開いて設定します。

キー操作の受信

5. GUI ツールの動作確認

パソコンのUSB ポートにYubiKey を挿入します。
※ USB-C ポートしかないので変換アダプタをかませました

YubiKey Manager セキュリティキー挿入後

挿入するとYubiKey が認識され、ファームウェアやシリアル番号の情報が表示されました。

6. CLI ツールのPATHを通す

続けて、GUI のパッケージをインストールすると、CLI ツール(ykman)も一緒にインストールされるので、CLI ツールの初期設定について解説しておきます。

GUI のパッケージでインストールすると、CLI ツール(ykman)は/Applications/YubiKey Manager.app/Contents/MacOS にインストールされます。

上記フォルダへのcd やフルパス指定せずにykman で実行できるようにPATH を通します。

~/.zshrc に下記を追記します。

export PATH=$PATH:/Applications/YubiKey\ Manager.app/Contents/MacOS

ターミナルを既に開いている場合は、source ~/.zshrc を実行して設定を反映します。

7. CLI ツールの動作確認

試しにいくつかコマンドを実行してみます。

ykman -v
→ CLIツールのバージョン情報が出力される
YubiKey Manager (ykman) version: 4.0.7

ykman list --serials
→ YubiKeyのシリアル番号が出力される

ykman --device <シリアル番号> info
→ YubiKeyのデバイス情報が出力される
Device type: YubiKey 5 NFC
Serial number: <シリアル番号>
Firmware version: 5.4.3
Form factor: Keychain (USB-A)
Enabled USB interfaces: OTP, FIDO, CCID
NFC transport is enabled.

Applications	USB    	NFC
FIDO2       	Enabled	Enabled
OTP         	Enabled	Enabled
FIDO U2F    	Enabled	Enabled
OATH        	Enabled	Enabled
YubiHSM Auth	Enabled	Enabled
OpenPGP     	Enabled	Enabled
PIV         	Enabled	Enabled

GUI ツールの画面構成

今後の作業ため、GUI ツールの画面構成を貼り付けておきます。
YubiKey 5 NFC の初期状態を後で確認できるようにすることも兼ねて。

Applications

YubiKey Manager > Application
Applications のリスト
YubiKey Manager > Applications > OTP
Applications > OTP
YubiKey Manager > Applications > OTP > Short Touch (Slot 1) *Configure
Applications > OTP > Short Touch (Slot 1) *Configure

FIDO2

YubiKey Manager > FIDO2
FIDO2
YubiKey Manager > FIDO2 > Set PIN
FIDO2 > Set PIN

PIV

YubiKey Manager > PIV
PIV
YubiKey Manager > PIV > Configure PINs
PIV > Configure PINs
YubiKey Manager > PIV > Certificates *Configure Certificates
PIV > Certificates *Configure Certificates

Interfaces

YubiKey Manager > Interfaces
Interfaces

ついでにSecurity Key NFC を挿入

Security Key NFC > Home
Home

Homeは、YubiKey 5 では表示されていたシリアル番号がないです。

Security Key NFC > Applications
Applications

Applications はFIDO2 だけが選択可能です

Security Key NFC > Interfaces
Interfaces

Interfaces はFIDO2 とFIDO U2F の2つだけです

ykman list --serials
→ 何も出力されない

ykman info
→ YubiKeyのデバイス情報が出力される
Device type: Security Key NFC
Firmware version: 5.1.2
Form factor: Keychain (USB-A)
Enabled USB interfaces: FIDO
NFC transport is enabled.

Applications	USB          	NFC
FIDO2       	Enabled      	Enabled
OTP         	Not available	Not available
FIDO U2F    	Enabled      	Enabled
OATH        	Not available	Not available
YubiHSM Auth	Not available	Not available
OpenPGP     	Not available	Not available
PIV         	Not available	Not available

Security Key NFC はシリアル番号が分からなかったけれど、シリアル番号を指定せずにデバイスの情報を確認することはできました。

あとがき

手持ちのMacBook Pro はUSB-C ポートしかないので、YubiKey 5C NFC を買った方がよかったかも。10ドル高いけど。

YubiKey Manager 以外にもYubico社が提供しているツールがあったので、最初見た時は混乱した。整理してみると開発停止になっていたりするので、YubiKey Manager に集約することになったのかもしれない。

他にも探したら何か見つかるかもしれませんが止めておきます。
Yubico Authenticator というクロスプラットフォームに使える感じの認証アプリがちょっと気になる。

参考

YubiKeyでTwitterアカウントを保護する

Yubico社のセキュリティキーYubiKey 5 NFC を購入しました。
とりあえず、Twitter のアカウントを保護することに使ってみたので、その際の手順と、セキュリティキーを紛失・破損した場合の代替手段について解説します。

はじめに

Twitter のログインについて

Twitter にログインする方法は、下記2つのいずれかを選択することができます。

  • Twitter アカウントのID(電話番号/メールアドレス/ユーザー名)とパスワードを使う
  • 他サイト(Google/Apple)のアカウントを使う

今回解説するのは1つ目「Twitter アカウントのID(電話番号/メールアドレス/ユーザー名)とパスワードを使う」の方で、IDとパスワードに加えてセキュリティキーを認証要素として登録するものになります。

Twitter の2要素認証について

Twitter の2要素認証では、2要素目に下記3つの方法を選択できるようになっています。(複数選択も可能)

  • テキストメッセージ
    • 登録した携帯電話番号にSMSで認証コードを通知して入力させる
  • 認証アプリ
    • スマホのGoogle 認証システム等のアプリに表示される認証コードを入力させる
  • セキュリティキー
    • YubiKey やGoogle のTitan Security Key 等のUSBタイプのセキュリティキーをパソコンに物理的に接続してタップ(またはスマホにNFCで無線接続)する

セキュリティキーは物理的にUSBキーを持っていることで当人確認する仕組みなので、セキュリティキーがユーザーの手元にある限り、第三者による不正ログインが成立しないことから、とても安全な仕組みとされています。

セキュリティキーを紛失・破損時の代替手段

セキュリティキーは物理的なUSBキーなので、紛失や破損した場合の代替手段を準備しておく必要があります。

  • バックアップ用の別のセキュリティキーも登録しておく
  • 2要素認証のテキストメッセージも登録しておく
  • 2要素認証の認証アプリも登録しておく
  • バックアップコードを控えておく

バックアップコードは、TOTPのように時間によって変化しない使い捨ての認証コードで、2要素目に使うことができる仕組みとして用意されています。
発行された認証コードは安全な場所に保管しておく必要があるのと、認証コードは使い捨てなので、使用した場合は新しい認証コードを発行して保管するという運用が必要です。

環境

今回使った環境です。

セキュリティキー

  • YubiKey 5 NFC

パソコン

  • Mac
  • Chrome

スマホ

  • Android
  • Twitterアプリ

セキュリティキーの設定(パソコン)

ブラウザでTwitter にログインした状態で、以下の流れでメニューを選択して2要素認証のページを表示します。

  1. サイドメニューの[もっと見る] を開き、[設定とプライバシー] をクリック
  2. [セキュリティとアカウントアクセス] > [セキュリティ] > [2要素認証] をクリック
設定(2要素認証)
※ イメージは認証アプリが既に設定されていた状態

[セキュリティキー] のチェックボックスをクリックします。

設定(パスワードを入力)

パスワードを入力します。

設定(セキュリティキー)ステップ1

[はじめる]をクリックします。

設定(セキュリティキー)ステップ2

[キーを追加] をクリックします。

設定(Chromeの小ウィンドウ)

[USBセキュリティキー] をクリックします。

設定(Chromeの小ウィンドウ)セキュリティキー

セキュリティキーを挿入し、タップしてください” と表示されたら、USB ポートにYubiKey を挿入します。
挿入するとYubiKey 本体が点滅するので指でタップします。

設定(セキュリティキーの名前)

登録したセキュリティキーに付ける任意の名前を入力して[次へ] をクリックすると、”完了しました” のページが表示されます。

どういう名前をつけるか?
・セキュリティキーを1つしか持っていないなら”YubiKey” でよい
・複数持っている場合は、
(1) どのYubiKey か分かる名前にする(例:”YubiKey 5 NFC” 、”Security Key NFC”)
(2) メインで使うものと予備用の使い分けが分かる名前にする(例:”Primary YubiKey”、”Backup YubiKey”)

設定(完了)

上の画像の赤枠の箇所にバックアップコードが表示されるので、安全な場所に保管しておきます。

バックアップコードをどうやって保管するか?
・物理的なノートに手書きする
・スクリーンショットの画像ファイルをパスワードマネージャー(1Password等)に保存する

[完了] をクリックすると設定は終了になります。

[パックアップコードを取得] をクリックすると、バックアップコードのページが表示されます。

設定(バックアップコード)

バックアップコードのページには、完了しましたのページに表示されていたのと同じバックアップコードが表示されます。
バックアップコードのページは、2要素認証のページにある[バックアップコード] をクリックして表示できるので、後で見ることができます。

青字の”新しいコードを生成” をクリックして新しいコードを発行することができます。新しいコードを発行すると古いコードは使えなくなるので、クリックした場合は新しいコードを保管しておく必要があります。

設定(2要素認証)

2要素認証のページに戻ると、[セキュリティキー] のチェックがONになっています。これで設定は終了です。

複数のセキュリティキーを登録したい場合は、青字の”セキュリティキーを管理” をクリックして表示されるセキュリティキーを管理のページで”別のキーを追加” から追加の登録をすることができます。

設定(セキュリティキーを管理)

セキュリティキーを使ってログイン(パソコン)

ブラウザでTwitter のログインページを表示します。

Twitterログイン

電話番号/メールアドレス/ユーザー名 を入力して[次へ] をクリックします。

Twitterログイン(パスワードを入力)

パスワードを入力して[ログイン] をクリックします。

Twitterログイン(Chromeの小ウィンドウ)
Chromeの小ウィンドウ

twitter.comで本人確認を行う” と表示されたら、[USBセキュリティキー] をクリックします。

なお、既にUSB ポートにYubiKey を挿入していると、このChrome の小ウィンドウが表示された時点でYubiKey 本体が点滅するので指でタップします。これでログインが完了します。
この場合、次の小ウィンドウは表示されないです。

Twitterログイン(Chromeの小ウィンドウ)セキュリティキー
Chromeの小ウィンドウ

セキュリティキーを挿入し、タップしてください” と表示されたら、USB ポートにYubiKey を挿入します。
挿入するとYubiKey 本体が点滅するので指でタップします。これでログインが完了します。

セキュリティキーを使ってログイン(スマホ)

Twitter アプリを起動してログインページを表示します。

Twitterログイン(スマホ)

電話番号/メールアドレス/ユーザー名 を入力して[次へ] をタップします。

Twitterログイン(パスワード入力)

パスワードを入力して[ログイン] をタップします。

Twitterログイン(Chromeのウィンドウ)

twitter.comでセキュリティキーを使用する” と表示されたら、イメージのようにスマホの背面にYubiKey を添えるようにくっつけます。

Twitterログイン(完了)

成功” と表示されたら[ログイン] をタップします。これでログインが完了します。

バックアップコードを使ってログイン(パソコン)

前述「セキュリティキーを使ってログイン(パソコン)」でパスワード入力後に表示されるChromeの小ウィンドウ(*)で[キャンセル] をクリックすると”別の認証方法を選択” のページが表示されます。

ログイン(別の認証方法を選択)

[バックアップコードを使用] のチェックボックスをクリックして[次へ] をクリックします。

ログイン(バックアップコードを入力)

バックアップコードを入力して[次へ] をクリックするとログインが完了します。

あとがき

  • 使用するセキュリティキーについて
    • 今回使用したのは高機能のYubiKey 5 シリーズ(最安モデル$45 USD)
    • 個人向けのSecurity Key シリーズ(最安モデル$25 USD)でも同じことはできる
  • テキストメッセージや認証アプリの2要素認証で十分では?
    • それらは追加費用が掛からないので誰でも手軽に導入できる点はいい
    • ユーザが入力したID・パスワードと2要素目の認証コードを入力させて、裏で自動で正規のサイトに入力する偽サイトがあるので、その方式だとそのような仕掛けを用意したフィッシング攻撃に引っかかると攻撃者に不正アクセスされてしまうので、十分とは言い切れない
  • 個人用のTwitter アカウントでそこまでする必要あるか?
    • 分かりません
  • 法人用のアカウントはセキュリティキーを使った方がよい?
    • セキュリティキーを使えば、専用のスマホを法人が用意する必要ない。セキュリティキーの方が低コスト、管理しやすいと思われる
    • スマホが必要な方式で個人のスマホが使われると何かが起こる(スマホの紛失、担当者が退職してログインできなくなる等)
  • セキュリティキーを紛失してバックアップコードもどこかにいってしまった。予備の2要素認証も設定していない。。
    • パスワードを忘れた場合はこちら” を使ってリカバリしましょう!(今回の調査範囲外)

参考